夜明けのカラス。
日の出時刻が早くなると
新宿2丁目で飲み明かしていた頃のことを思い出す。
当時、2丁目で知り合った彼女(彼)たちは私の人生に大きな刺激と影響を与えた。
彼女(彼)たちは人としてとても深い。
子供を産んで数ヶ月の時、
友人の結婚式の二次会の流れで行った新宿二丁目のショーパブで
見目麗しい彼女たちと親しくなった。
手抜きネイルな爪を見て
「オンナなら指の先まで気を遣いなさいよぉ。天然(のオンナ)ってことに甘えて怠けてるんじゃないわよぉ〜」
と喝を入れられた。
そのセリフを放った彼女の爪はピカピカに磨かれてた。
確かに!
女という性別に産まれて
なんとなく成長して
見てくれだけ飾っていれば
大抵の男がメスとして扱ってくれることが当たり前だったから
女性として愛される為に努力を惜しまない彼女たちからすれば
手抜きなオンナと見られても仕方ない!
「おかまが元気なうちは景気がいいのよ」とか
「生涯現役のおかまでいるから、あんたも生涯現役のオンナ、頑張って貫きなさいよ」とか
「あんたはいっぱい授業料落としてきたんだから、訳わかんないやつのいうことより自分をもっと信じなさい」とか
なんかよくわからないのに納得させられる言葉をたくさんもらった。
自宅でお鍋つつこうよーとなれば
「おかまがお鍋よー!あーーーー。笑」
と、独特の笑い声を上げながら
女子高生のような可愛らしいはしゃぎっぷり。
朝まで飲み明かして
みんなで朝定食べて帰るとか
出勤してくるサラリーマンとすれ違いながら帰宅するなんてこともあったなー。
「悩みの深さはマリアナ海溝より深いわよー」
と言いながらも屈託無く笑う彼女たちに
本当に勇気づけられる日々だったな。
コートが必要な時期に足を踏み入れた場所だったけれど
だんだんと夜明けが早くなり
化粧崩れがバレる今ぐらいの時期に
それまでは見えなかったものが見え始めた。
午前4時を回って
薄っすらと夜が明け始めると
看板のネオンや賑わっていたオネーサマたちの声に代わって
点滅する信号に 遠くから集まって来るカラスの鳴き声が響いて来る。
仲通りの十字路から四谷方向を向くと
濃紫から紅色へと変わり始めた空を背景に
灰色の雑居ビルが遺跡のように見えた。
営業の終わった店から出てくる魔法の解けたシンデレラたちに
どんどん近付いてくる鳥の羽ばたき。
生きる術を必死に模索する人々と
都会を逞しく生きるカラスたちが重なって見えた。
漆黒の羽に覆われたカラスたちは
陽の光の下ではアラが見え
闇の中では紛れて見分けられず
その生き様を理解できない者からは疎まれることもある。
それでも強く美しく生き抜く姿に
勇気と感動を与えられる者も多く存在する。
親愛なる夜明けのカラスたちは
今も色々な街で逞しく生きている。
ひたむきな努力を惜しまず
生きることを楽しみながら
新しいコトに挑戦している。
人生も後半戦だからって
もしや私はまた手抜きし始めてるっ!?
人として、オンナとして、
夜明けを楽しむカラスとして?
『生涯現役』を貫くために
ちょっとまた気合い入れ直さなくちゃだっ!